
中国山地は、日本有数のオオサンショウウオ(地方名ハンザケ)の生息地。中でも、島根県邑南町には、5千匹以上が生息しているとみられる一大生息地だ。世界最大の両生類で、「生きた化石」といわれる雄姿をカメラに収めるべく、瑞穂ハンザケ自然館(同町)学芸員の伊東明洋さんたちが夜間に行う調査に同行した。
邑南町上田所にある「ハンザケ観察舎」の近くの出羽川。川面をライトで照らしながら探していると、すぐに川のほとりの草の下にオオサンショウウオを発見。ゆっくり、網ですくう。あっちこっちで見つかり、全部で6匹。体長も70センチに達する大物も。
かつて調査捕獲した個体には、識別のためのマイクロチップが埋め込まれているが、この日は4匹が新たに見つかった個体だった。梅雨の大雨で、上流から流されてきた可能性もあるという。新たにマイクロチップを皮膚の下に埋め込む作業も行われた。
特別天然記念物のオオサンショウウオは捕獲ができない。こうした個体調査を続けながら、生息環境の維持につなげている。近年は中国産が広がり、広島県内では交雑も進み、純粋種を脅かす。さらに、コンクリート護岸の増加で成育環境が悪化。ゲリラ豪雨による川の増水で、下流に流され、個体減少も懸念される。
ハンザケ自然館はこうした調査のほかに、同館内で3匹を飼育。完全屋内水槽で、国内で初めての産卵を実現した。町内の発光ダイオード(LED)メーカーの協力で、自然に近い光の環境を整えたことで生まれた快挙だった。
寿命は60年を超え、体長1メートルを超えることもあるというオオサンショウウオ。人間よりはるかに長い時間、この中国山地で暮らしてきた。川の環境と人々の暮らしを調和させながら、ハンザケがこれからも生き続けられる里山を守っていきたいものだ。
写真1:出羽川での調査で、一時捕獲したオオサンショウウオを確認する伊東さん㊨たち
写真2:ハンザケ自然館内の水槽で過ごすオオサンショウウオ。国内で初めて完全屋内水槽での産卵に成功した


- もりた・いっぺい
- 1968年、島根県邑南町生まれ。地方紙記者を経て、JR三江線の廃止を機に帰郷。町役場で働きながら、NPO法人江の川鉄道の設立に加わり、廃線跡にトロッコを走らせる。年間誌を発行する「みんなでつくる中国山地百年会議」事務局長。江の川流域広域観光連携推進協議会のメンバーとして広報を担当する。邑南町在住。