邑南町

産直市みずほ
商品棚から「わくわく感」

「お正月が近くなるとお餅が品薄になりますけぇ、早めにゲットしちゃんさいよ~」。道の駅瑞穂(島根県邑南町下田所)に隣接する「産直市みずほ」の店内に入ると軽やかな石見弁のアナウンスが流れる。

棚に並べたコンテナに旬の野菜が並び、こだわりの加工品や土産物もある豊富な品ぞろえが人気で、店内はいつも買い物客が絶えない。全国的に大型の産直市が主流となる中で、小さな売り場で売り上げは年間3億円を超え、中国地方でも屈指の産直市だ。

朝9時の開店時から買い物客がひっきりなしに入店する。今年実施した来店者調査によると、広島県や島根県西部から来店する一方、町内の利用者も多い。スーパーなどに比べて低価格で、商品には生産者の名前が記載される。店内には顔写真も張り出され、「この人が作った野菜」「この人の漬物」といった安心感から固定ファンも多い。

値付けは生産者が自ら行うのが〝みずほ流〟。市場価格や他の生産者の値段を見定め、その日の値段を決める。珍しい野菜を栽培したり、市場にはあまり出回らない山菜を出荷したり、一人一人が工夫を凝らすので、商品棚はわくわくするような多彩な商品がそろう。

小西圭二店長(62)は「お客さんからは、何があるのか探すのが楽しい、と喜んでもらっています。新型コロナで一時落ち込んだ売り上げも回復しています」と笑う。年末に向けては、しめ縄やお餅、黒豆、小豆など正月準備のための商品が並び、お餅を町外の親戚に送る人たちで一層にぎわいを増す。

2025年夏のオープンを目指して、隣接地に新しい道の駅瑞穂の建設工事が始まった。およそ40年前に小さなテントから始まった産直市みずほも入居予定。施設は変わっても、一人一人の生産者と来店者をつなぐ「わくわく感」は続いていくだろう。

写真1:産直市みずほで3段になった棚にびっしりと並んだ新鮮な野菜を品定めする来店者
写真2:年末の店頭で人気となるきねつきのお餅をPRする小西店長

≪メモ≫産直市みずほは国道261号沿いにある道の駅瑞穂に隣接し、2004年6月にオープンした。営業時間は午前9時~午後6時。年中無休(1月1、2日は休み)。産直市みずほ☎0855(83)1217。

※この記事は令和5年12月9日の中国新聞に掲載されたものです
もりた・いっぺい
1968年、島根県邑南町生まれ。地方紙記者を経て、JR三江線の廃止を機に帰郷。町役場で働きながら、NPO法人江の川鉄道の設立に加わり、廃線跡にトロッコを走らせる。年間誌を発行する「みんなでつくる中国山地百年会議」事務局長。江の川流域広域観光連携推進協議会のメンバーとして広報を担当する。邑南町在住。

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