邑南町

江の川鉄道
廃線跡守るトロッコ運行

JR三江線が廃線になって6年。廃線2ヶ月後の2018年5月、町内外の鉄道ファンや地域住民が集まり、NPO法人江の川鐵道(島根県邑南町宇都井)を設立し、トロッコの運行を始めた。15人ほどの設立時の会員は、廃線前から三江線を守りたい、とイベントを開催してきた沿線地域や広島県内の9団体のメンバーだった。

廃線が決定した2016年秋、9団体代表が集まった。三江線存続を願った各団体は目標を失ったが、「私たちは鉄道を守ることを通じて、地域を守りたかったはずではないか」と話し合い、廃線跡にトロッコ型の車両を走らせる構想が浮上。廃線までの1年余り、全国から乗りに来る人たちに三江線グッズを開発して販売。利益を元に1台のトロッコを購入した。

邑南町に口羽駅や宇都井駅の取得を働きかけ、無償譲渡を受けた町が両駅を「三江線鉄道公園」と位置づけた。同公園の指定管理者となった江の川鐵道が、週末を中心に年間50日運行。JRの協力で江の川に架かる鉄橋も渡れるようになり、現在は6両のトロッコを保有する。運行スタッフは設立メンバーに加え、鉄道ファンら「関係人口」に支えられる。

トロッコ運行について町からの金銭的な支援はなく、乗車料金やグッズ販売の収益で廃線後の維持管理を行う。4月6日に開いた「枕木交換作業体験会」には、広島市内の3人が枕木交換に汗を流すなど、会員と参加者で廃線後を楽しみながら守り続ける。今後、トンネル点検体験、信号操作体験、トロッコ運転体験なども計画する。

日高弘之理事長は「過疎化が進む中で、地域内外の人々の応援で江の川鐵道は成り立っている。一人でも多くの人に参加してもらうことを通じて、三江線の歴史を後世に伝えていきたい」と話している。

写真1:江の川に架かる鉄橋を渡る江の川鐵道のトロッコ。橋の真ん中が島根県と広島県の県境になっている=島根県邑南町下口羽
写真2:枕木を固定する「犬釘」をハンマーで打ち込む作業を体験する参加者=島根県邑南町下口羽

メモ トロッコ乗車は大人1300円、小学生600円(未就学児無料)。4月〜8月は口羽駅発着(約1.2㌔往復)、9月は作木口駅発着(約1㌔)、10〜11月は宇都井駅発着(約1㌔)。イベントも含め、江の川鐵道のホームページから予約できる。問い合わせは090・3221・5040へ。

※この記事は令和6年4月27日の中国新聞に掲載されたものです
もりた・いっぺい
1968年、島根県邑南町生まれ。地方紙記者を経て、JR三江線の廃止を機に帰郷。町役場で働きながら、NPO法人江の川鉄道の設立に加わり、廃線跡にトロッコを走らせる。年間誌を発行する「みんなでつくる中国山地百年会議」事務局長。江の川流域広域観光連携推進協議会のメンバーとして広報を担当する。邑南町在住。

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